
前回は、医学界の頂点に君臨する「BIG 4」を紹介しました。
これらの雑誌は総合誌なので内科以外のものも掲載されています。
そこで今回は、「内科」に特化した、4つの雑誌を紹介します。
特に前半の2つ(Annals、JAMA IM)は、内科医を志すならBIG 4と同じくらい重要です。
定期的に読むのであれば、内科医としてはこの雑誌たちがメインになるでしょう。
これらを知っていると、指導医からの評価も「お、こいつはわかってるな」と爆上がり間違いなしです。
僕もBIG 4とAnnals、JAMA IMはざっと目を通すようにしてます。
1. Annals of Internal Medicine ~内科医のバイブル、実質的な「No.5」~
- 創刊: 1927年
- 発行: 米国内科学会(ACP)
- Web: https://www.acpjournals.org/journal/aim
歴史と特徴:内科臨床の最高峰
米国内科学会(ACP)が発行するジャーナルです。そうです、あのMKSAPのACPです。
Impact Factorや臨床への影響力を考えると、BIG 4に次ぐ「世界第5位」の医学雑誌と言っても過言ではありません。
BIG 4が基礎研究や外科領域も含むのに対し、Annalsは徹底して「成人の内科臨床」にフォーカスしています。そのため、掲載される論文は明日の診療に直結するものばかり。
また、統計学的な審査の厳しさや、ガイドライン作成のプロセス(システマティックレビュー)の質の高さには定評があり、EBM(根拠に基づく医療)の総本山のような存在です。
専攻医が読むべき理由:忙しい君たちのための「論文ソムリエ」
Annalsには、研修医の皆さんが泣いて喜ぶキラーコンテンツが揃っています。
これぞAnnalsの真骨頂です。
世界中の100以上の主要医学誌から、「臨床的に重要」かつ「研究手法が信頼できる」論文だけを厳選して紹介するコーナーです。
ただの要約ではありません。構造化された読みやすい要約(Structured Abstract)に加え、その分野の権威による「解説(Commentary)」が付いています。
「この研究の素晴らしい点はここだが、この患者層には適応できない可能性がある」といった批判的吟味のお手本が示されているのです。
忙しい研修医が、効率よく質の高いエビデンスを摂取するには、毎月このJournal Clubに目を通すのが最短ルートです。
これは「神コンテンツ」です。
高血圧、糖尿病、貧血など、ありふれた疾患について、疫学から診断、治療、予防までをフローチャート付きで完璧にまとめてくれています。
読みやすさと、選択する疾患などから初期研修医の先生にも始めやすいReviewかと思います。
UpToDateよりも視覚的で分かりやすく、これを印刷して持っておくだけで「内科外来の守り神」になります。
「ガイドラインではこう決まっているが、この患者さんには当てはまらない…」というグレーゾーンの症例に対し、2人の専門家が議論を戦わせるコーナー。
臨床の「さじ加減」や「個別化」を学ぶのに最適です。
2. JAMA Internal Medicine ~「やりすぎ医療」に警鐘を鳴らす改革者~
- 創刊: 1908年(旧 Archives of Internal Medicine)
- 発行: 米国医師会(AMA)
- Web: https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine
歴史と特徴:思考停止しない医師になるために
The BIG 4であるJAMAの姉妹紙ですね。
かつては『Archives of Internal Medicine』という名前でしたが、2013年に現在の名称に変更されました。
この雑誌の最大の特徴は、「Less is More」という哲学です。
このコーナーをまとめた本も売ってますよね。
「新しい薬や検査が常に良いわけではない」という視点に立ち、過剰診断・過剰治療、ポリファーマシー、医療費の問題などに鋭く切り込む論文を好んで掲載します。
Impact Factorも非常に高く、時にBIG 4の一角を脅かすほどの影響力を持つ、今最も「勢いのある」内科ジャーナルの一つです。
専攻医が読むべき理由:失敗から学ぶ
ただガイドラインに従うだけでなく、「本当にこれが患者さんのためになるのか?」と立ち止まって考える力を養ってくれます。
「不要なCTを撮ってしまった」「抗菌薬を使いすぎて耐性菌が出た」といった若手医師の失敗談(症例)を出発点に、そこから得られる臨床的な教訓を解説しています。
「あるある」な失敗から、適切な臨床判断(Choosing Wisely)を学べます。
JAMA本誌と同様、画像診断や心電図のクイズが豊富です。
内科特有の、一見地味だけれど重要な所見を拾うトレーニングになります。
3. The American Journal of Medicine (The Green Journal) ~”緑の雑誌”は教育の味方~
- 創刊: 1946年
- 発行: 米国アカデミック内科学会(AAIM)
- Web: https://www.amjmed.com/
特徴と読みどころ
アメリカの内科教育の親玉である米国アカデミック内科学会(AAIM)が発行元です。
表紙が緑色であることから、通称「The Green Journal」として親しまれています。
上位誌に比べるとImpact Factorは落ち着きますが、その分、最先端の研究というよりは「教育的価値」や「レビュー」に重きを置いています。
米国のアカデミックな内科医(教育者)たちが愛読する雑誌であり、難解な論文よりも、臨床医が読んで「なるほど」と思える記事が多いのが特徴です。
専攻医へのアドバイス
「Clinical Images」などの画像コーナーが充実しており、視覚的に楽しく学べます。
また、特定の疾患についての総説(Review)は、教科書的な知識をアップデートするのに程よい分量と難易度です。
「BIG 4は重すぎるけど、何か英語の論文を読んでみたい」という時のデビュー戦におすすめです。
4. Mayo Clinic Proceedings ~世界一の病院の臨床知~
- 創刊: 1926年
- 発行: メイヨー・クリニック
- Web: https://www.mayoclinicproceedings.org/
特徴と読みどころ
あの世界的に有名な「メイヨー・クリニック」が発行する機関誌です。
一病院の雑誌と侮るなかれ、そのクオリティは非常に高く、近年Impact Factorも上昇傾向にあります。
メイヨー・クリニックの膨大な臨床データに基づいた研究や、同病院の熟練指導医たちによる質の高い教育記事が売りです。
臨床現場での「実践」を何よりも重視する姿勢が貫かれています。
専攻医へのアドバイス
「Concise Review for Clinicians」や「Residents’ Clinic」といったコーナー名からも分かる通り、臨床医・研修医教育に非常に力を入れています。
複雑な病態生理よりも、「ベッドサイドでどう動くか」という実践知を学びたい時に、非常に頼りになる雑誌です。
まとめ:内科医の引き出しを増やす
BIG 4が「医学の歴史を変える発見」を載せる場所だとすれば、今回紹介した4誌(特にAnnalsとJAMA IM)は「日々の診療の質を高める知恵」を授けてくれる場所です。
- 困ったときの教科書代わりなら Annals
- 「本当にその検査必要?」と迷ったら JAMA IM
- 程よいサイズのレビューを読むなら Green Journal
- 臨床の達人の技を知るなら Mayo Clinic Proceedings
僕は専攻している分野の専門誌にも目を通しているので(というか、そちらがメインですので)、後半2者は流石に目を通していないですが、教育に力を入れ始めた総合診療科の先生などはたまに見てみるのはいいのではないでしょうか。
まずは、自分の興味のある疾患のレビュー記事などが載っていないか、検索してみることから始めてみてください。
きっと、教科書だけでは得られない「生きた知識」に出会えるはずです。
