今回は内科専攻医向けの総合内科の本のご紹介です。
この時期だとすでに専攻が決まっている人がほとんどで、他科の勉強から「逃れられる」と感じる方の方が多いでしょう。
ただ、初期研修の頃と違い色々なことができ、わかるようになってから勉強し直すとさらに内科学の理解が進みます。
内科学は広くかつ深い診療科です。奥深く難しいです。
だからこそ魅了されます(個人的に)。
内科学にどっぷり浸かりましょう!
※こちらの本が難しいと感じた方は下記を参照ください
『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』
副題にもあるように診断学の本となります。
内科医としての必須能力ですね。
学生時代にはあまり気をつけなかった感度・特異度などの疫学を全面に出している本です。
内科医の基本は問診からの身体診察です。その能力を一段上げてくれます。
例えば「めまい」の項目を引いてみると、抹消生めまいは~%、中枢性めまいは~%と書いてくれています。しかもプライマリケアの場合や救急外来での場合などに分けて記載があります。
救急科の先生が初期研修医と比べて患者さんの対応が速いのは、経験的なものも含めて頭の中にこういった疫学が入っているからです。ですから、次に必要な身体所見や検査がパッと思い浮かぶんですね。
また、身体所見も救急の現場ではプライマリケアとは違い丁寧にできないことも多いです。必要十分で意味のあるものが求められます。そんな時に感度・特異度が有効になってきます。
「この年齢・この症状で来院しているから~の可能性が高い。だから特異度の高い~の検査が必要で、ついでに恐い~の疾患を除外するために感度の高い~の検査が必要。」と頭が働く訳です。
この本には身体所見の感度・特異度もあるので、診断を詰めていく(除外していく)時に役立ちます。
疫学を活かすとは言うのは簡単で実行するのは恐ろしく難しいです。しかし、感度・特異度などを意識して診察や検査をすることはできる医師になるには必須知識だと言っても過言ではありません。
救急外来でこの本を参照にしつつ少しずつ身につけていきましょう。
改訂を諦めていた頃に改訂版が出版されました。
カラーとなり非常にみやすくなったと思います。
改訂前までは症候学とはいえ流石に古くなってきたのですが、この改訂で自信を持っておすすめできるようになりました。
長くお付き合いできる良書です。
下記『ホスピタリストのための内科診療フローチャート』と合わせて内科専攻医となるなら必読本だと思ってます。


『ホスピタリストのための内科診療フローチャート』
素晴らしい本です。
『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』と合わせて内科専攻医必読本だと思います。
内容としては、診療をしていると結構な疑問が出てくるのですが、それに豊富なエビデンスをもとに答えてくれる本となっています。
論文をまとめた感じに近いので、英語を読むのが苦手な人でも最新に近い情報(エビデンス)を得ることができます。
もともとは総合内科医や一般内科医向けがこの本のスタートだったはずですが、もはや詳しく書きすぎて専攻医レベルのことが書いてあります。
※現在は第3版まで改訂され随分分厚く詳細な記載になりました
総合内科医を専攻予定の人や、内科を専攻し他科の内科疾患の知識を深く学びたい人にはうってつけの本だと思います。
内科専門医試験にも使えたりしますので、悩む方はそのレベルだと思っていただけたら、と思います。
ここまでくると、次のステップはおそらく原著になってくるでしょう。


『國松の内科学』
まだ発売されてませんが、購入予定の本で、良さそうな気がしているので参考程度に紹介しておきます。
※その後購入し、予想通り素晴らしい本であったのでそのまま紹介です。
有名な國松先生の渾身の内科学本です。
購入前は『卒後20年目総合内科医の診断術』の國松先生バージョンって感じかと思ってましたが、通称「青木本」である『感染症レジデントマニュアル』との中間点ぐらいの本となってます。
最初に総論が書かれてありますが、一読する価値ありです(「青木本の総論と同じです」)。
病歴聴取や身体診察、検査や画像に対する著者の考え方が書かれてあります。それも割と本音が書かれてあります。
今日の内科臨床で身体診察による身体初見が有力な根拠になって診断に直結することは少ないかほぼない。(p.19 6-8行目)
もちろん、身体診察は重要であることを強調しての上記ですが、なかなか本では書きにくいところですが、その思いが書かれてあります。
臨床推論での「仮説生成とは、ある可能性にbetすること」も本当にその通りだと思います。
僕は臨床が好きなのですが、苦手な方はおそらくこの臨床推論で國松先生が述べられていることに躓いているんじゃないでしょうか。
各論に関しては青木本ほど細かくは書かれてありません。この辺はやや『卒後20年目総合内科医の診断術』に近い印象です。
ただ、國松先生のこれまでの診療パールやエキスパートオピニオンとしての意見も書かれてあります。
そして、ここがこの本の一番の売りでしょう。単著であることが存分に生きてます。
教科書的につらつらと述べられているのではなく経験をもとに書いてあるものはエビデンス不足と思われがちですが、診療していて困るのは “エビデンスが不十分なところをどう診療するか” にあり、そこに十分な経験を持って答えてくれるのは非常に参考になります。
得てして、そういう本が好きだったりもします。
書きたいことが先にあり、その結果書いた本であることが感じられます。
そのためにこの本の底に國松先生の臨床哲学が流れてあります。
ぜひ読んで感じてみてください。
この本はきっと内科医にとっての必読本になるでしょう。


『卒後20年目総合内科医の診断術』
有名な本じゃないでしょうか。僕が学生時代に買った時はver.1の「10年目」だったのですが、気がつけばver.3になり名前も「20年目」になりました。
大きく3章に分かれていて、救急外来編、総合内科外来編、入院診療編、となっています。
内容としては、症候から頭の働かせ方や、気をつけなければいけない点などを説明してくれています。特別変わった考え方などを披露している本ではありません。
これ一冊で他の総合内科系の本で記載されているような疾患や考え方は一通り学ぶことができます。
よくある症候から怖いものを見逃さないようにする。総合内科らしい本ですね。でもこれが結局一番初期研修期間で大事なところでしょう。そう思って僕も救急や総合内科系の本をメインに勉強してきました。
ただ、救急外来編となっているところも、あくまで総合内科医視点での救急外来って印象があります。
読んでいて、「いやー、流石に救急の現場でそこまではなかなかできないよなー」ってのがちょくちょくあります。まあ、これは僕の経験不足のためかもしれません。僕もいつかそこまで考えて動けるようになりたいなと思う日々です。
個人的な話なんですが、学生時代に読んでいたときは難しく理解できないものが多かったのですが、初期研修医時代に読んでみると書いている背景なども理解できるようになってました。
そしてver.3となった最新版ではほとんど内容を把握しており、ver.1で卒後10年でそんなことまで考えられるようになるのか、と不安に思っていたことも自分でできるようになっており、毎日継続することの大切さを実感してます。
この本とともに成長したみたいで感慨深いです。
臨床力がある著者が20年の医師人生で得た教訓を惜しげもなく披露してくれている本です。


『周術期内科管理のディシジョンメイキング
米国内科学会(ACP)が刊行している本の日本語訳です。
初期研修の外科研修時に欲しかった本です。
最初から内科医志望であり、外科研修時は手術なんかよりも(というと外科の先生に怒られそうですが)周術期の内科管理を勉強したくて、その趣旨の本を探し回ったのですが全くなく、麻酔科向けの本で済ましてました。
その後に発売された本です。
麻酔科向けの本はあたり前ですがどうしても麻酔科視点のためこちらが欲しているものと若干の違いを感じていたのですが、この本はまさにドンピシャの本ですね。
しかも発行元が米国内科学会(ACP)というのも安心できます。
こういう本もしっかりしているところからも、やはりアメリカの医療は進んでいるんだろうな、と感じてしまいます(いい面も悪い面もあるんでしょうけど)。
”ホスピタリスト” というものはまだまだ日本には根付きそうにないですが、そのマインドがある方は手にしてみてください。


『なぜあなたのACPはうまくいかないのか』
ACP(Advance Care Planning)についての本です。
著者は日本で耳鼻科医として診療した後にアメリカで緩和ケア専門医として働かれているようです。
僕はACPにもともと非常に大切にしていたので、この本から何か新しいことを学ぶことはほとんどありませんでした(お陰で自分のACPは問題なかったと確認することはできました)。
が、皆さんはACPはきちんと実施できてますか?
本の内容としては正直何か特殊なことが書かれているわけではありません。ACPの基本中の基本です。
が、悲しいかな、正直この内容ができている人は日本にはほとんどいません。
“診療すること” と “病気を診ること” は違います。あなたは診療できてますか?
ACPは何もがん診療をしている医者だけが必要なスキルではありません。全ての医師に必要なスキルです。
自分はACPの基礎ができているかどうか、ぜひこの本を手に取って確認してみてください。
全ての医師がこの本を実践できることを祈ってます。


『Hospitalist』
こちらは本じゃなくて雑誌です。
医学雑誌は本当に色々出版されています。初期研修医向けだと初期研修医御用達(?)の羊土社出版『レジデントノート』と、医学出版社からの『レジデント』あたりでしょうか。
『レジデントノート』あたりは増刊号のどれかを買ったことがある人もいるでしょう。救急のおすすめ本で紹介した『Step Beyond Resident』も『レジデントノート』のコラムをまとめて本にしたものです。
ですが、今回紹介するのはそれらではなくて『Hospitalsit』っていう雑誌です。今回紹介しているだけあり、こちらは総合内科向けの内容を取り扱っています。ちなみに総合内科医向けの雑誌は他にもあります。
初期研修医におすすめするなら『レジデントノート』となりそうですが、『レジデントノート』はあまり経験のない初期研修医向けに書かれているため詳しさが物足りないと感じることが結構あります(その分、初学の分野を勉強するときはとっつきやすいんですけどね)。
今回紹介している『Hospitalist』はすでに臨床を経験している先生向けの本ですので、臨床をベースにしてより突っ込んだ内容を記載してくれています。
普段~ということをやっているが、それにはエビデンスがあるのか、今そのことの先端はどうなっているのか、などを知ることができます。
しかも総合内科向けの雑誌なので専門すぎないところもいいですね。必要十分な情報といった感じです。
僕は定期購読しているわけではありませんので、必要なもののみを購入しています。
みなさんが興味がありそうなものの中で、おすすめできそうなのが『内科エマージェンシー』『総合内科のための集中治療』の2冊です。
「救急や集中治療を少し突っ込んで勉強してみたい」と思っても今まで紹介した例えば『ICU/CCUの薬の使い方, 考え方』などは分厚すぎて読めないって人にちょうど良い分量だと思います。
他にも良書があるので、気になったら探してみてください。