【研修医・専攻医へ】医学論文って読む必要ある?論文の種類やIF(インパクトファクター)についても解説

医師として働き始めると、カンファレンスや回診の場で上級医からこんな言葉をかけられたことはありませんか?

「その根拠となる論文はあるの?」 「最近のNEJMではこう言われているよ」

医学の世界において、常に最新の知見(Evidence)をアップデートすることは重要です。

それは間違いない。

でも、右も左もわからない初期研修医のうちから英語の論文を読み漁る必要はあるのだろうか?

今回は、これから医師としてのキャリアを積んでいく研修医や若攻医に向けて、「医学論文との付き合い方」や「そもそも論文とはどういう構成なのか」といった基本的なことについて、僕なりの考えを書いていきたいと思います。参考になれば。

初期研修医に論文は必要か?

結論から。 初期研修医のうちは、無理して論文を読む必要はない

もちろん、興味があって読む分には止めるつもりはさらさらありません。むしろ素晴らしいです。

しかし、「読まなければならない」という強迫観念に駆られる必要は全くないです。

なぜかというと、そもそもその前にすべきことがいくらでもあるからです。

初期研修医の2年間で最も大切なこと。 それは、目の前の患者さんの診察(身体所見、病歴聴取)を丁寧に行うこと。これにつきます。

どんなに最新の論文を知っていても、医師としての基礎ができていないと何の意味もなしません。

これは医師国家試験で基礎の重要性を何度も強調したのと一緒ですね。

まずは医師として「病歴」と「身体診察」。

これです。

救急で失敗したな、と思う時は大体これが疎かになった時です。内科外来をやっていても一番重要なのこはこれです。

それに、論文が不要な理由がもう一つ。

今の時代は本当に恵まれてます。 一昔前とは違い、今は日本語の医学書(参考書)で素晴らしい良書が溢れてます。 

このブログでも内科系は診療科毎におすすめの教科書の記事を書いているので参考にして見て下さい。

初期研修医レベルで求められる知識は、99%日本語の教科書でカバーできます。

まずは日本語で、基礎を固めることに全力を注ぎましょう。

内科専攻医(後期研修医)はどうするか

では、内科専攻医になったらどうか。 ここでもスタンスは一緒です。

内科専攻医であろうと、基本は日本語の教科書で間に合うことが多い

専門医の場合の違いは初期研修医よりも治療に責任が出てくることでしょう。日本のガイドラインが初期研修の頃よりも使う頻度が増えるのではないでしょうか。

基本はこのガイドラインと日本語の教科書がベースです。

英語論文が読めないからといって、臨床で致命的に困ることは(稀な疾患を除けば)そう多くはないはず。

「デキレジ」を目指すならReview Article

とはいえ、専攻医とも後半となってくれば(ローテートする系の研修か、医局員のようにずっと同じ診療科か、で話は変わってきますが)、ある程度のことは経験するため何となくできるようになってきます。

この辺りの時期で、もし周囲から一目置かれる「デキレジ」になりたいとか、あるいは専門領域の知識を深めたいと思うなら、論文に手を出してみるいい時期ではないでしょうか。

そしてそれにピッタリな方法が、世界4大医学誌(The Big 4)「Review Article」を読むことです

  • NEJM (The New England Journal of Medicine)
  • The Lancet
  • JAMA (The Journal of the American Medical Association)
  • BMJ (The British Medical Journal)

これらの超一流誌に掲載される「Review Article(総説)」は、その分野の大家が、膨大な過去の研究結果をまとめ、現時点での「決定版」として解説してくれているもです。

教科書よりも情報が新しく、かつ原著論文(Original Article)よりも体系的にまとまっている。

これを読む習慣をつけるだけで、知識の深みは格段に増すはずです。

ちなみに僕も論文(Review Article)をしっかりと読むようになったのは医師5年目あたりからです。

この時期から、The Big 4の2020年以降の内科系Review Articleを全部PDFに保存して読むようにしてました。

逆に言えば、この時期まではそもそも「The Big 4」すら知らず、NEJMをかろうじて知っている程度でしたし、論文は抄読会でイヤイヤ読んでいただけです。

そもそも「論文」ってどんな構成?

「論文を読め」と言われても、英語の羅列に圧倒されてしまう人も多いでしょう。

医学雑誌に載っている文章は、いくつかの「型」に分かれてます。

これを知っておくだけで、自分が何を読むべきかが明確になって楽になるはずです。

1. Editorial(エディトリアル)
その号に掲載された重要なOriginal Articleに対して、専門家や編集者が「解説」や「意見」を述べたもの。
「今回のこの研究は、ここが画期的だけど、ここには限界があるよね」といったプロの視点が書かれているので、その論文の意義を理解するのに役立ちます。

2. Original Article(原著論文)
いわゆる「研究論文」。抄読会で準備とかが必要になるのはこの論文のことです。
「新薬Aと偽薬Bを比較したら、Aの方が生存率が高かった」といった、新しい科学的発見や臨床試験の結果が書かれてます。

3. Review Article(総説)
先ほどおすすめしたものですね。特定のテーマについての「まとめ記事」です。 研究データそのものではなく、過去の文献を整理・考察したもの。教科書のアップデート版という認識です。

4. Case Report(症例報告)
珍しい疾患、あるいは一般的な疾患の珍しい経過などを報告するもの。「こんな症例を経験したから、みんなも気をつけてね」というメッセージが込められている。The Big 4などのような有名誌などは定期的に掲載してないことが多いです。

5. Letter(レター)
編集部への手紙です。 掲載された論文に対する読者からの反論や質問、あるいは短い症例報告などが含まれます。「速報」的な意味合いで使われることも多い。

みんなが気にする「IF(インパクトファクター)」とは

最後に、よく耳にする「IF(Impact Factor:インパクトファクター)」について。

簡単に言えば、その雑誌の「偏差値」や「知名度」のようなものです

計算式は単純で、「その雑誌に掲載された論文が、過去2年間にどれだけ他の論文に引用されたか」の平均値です。

つまり、「IFが高い=多くの研究者に引用される、影響力の大きい雑誌」ということになる。

ちなみにThe Big 4のIFはどれくらいか、というと

  • NEJM: IF 80〜100以上
  • The Lancet: IF 80〜100前後
  • JAMA: IF 55前後
  • The BMJ: IF 40〜45前後
  • 一般的な専門誌: IF 3〜10くらい(それでも十分に高いですが)

一般的に数字が高ければ高いほど、「すごい雑誌」と認識されます。

ただ、臨床医として論文を読む上では、「IFが高いから正しい」「低いからダメ」というわけではないです。というのも専門性が高いニッチな分野の雑誌は、どうしても引用数が減るためIFは低くなりがちですけど、内容が素晴らしいものはいくらだでもあります。

The Big 4のIFが高いのは内科、外科、小児科、etc…と全てがある総合誌だからです。

IFはあくまで「雑誌の格」を測る一つの指標として覚えておくといいでしょう。

論文とはなんぞや、はこの本が一番わかりやすく書かれてます。

興味があれば。

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