
前回は、Annals of Internal Medicine、JAMA Internal Medicine、BMJ Medicine、Journal of Internal Medicineという、内科医が押さえておきたい内科BIG 4とも呼べる“内科トップジャーナル”を紹介しました。
今回は古豪とも呼べる雑誌達です。
より実臨床に近く、教育的で、日々の診療感覚を磨いてくれる雑誌たちです。
内科医の中で循環器内科、などの専門診療科があればその専門雑誌を読まなければならないためこの辺りの雑誌に眼を通す余裕はないでしょう(というより内科BIG 4ですら読んでいない人がほとんどでしょう)。
総合診療科へ進む人はそういった雑誌がなく、余裕がある人たちにとっては最適な雑誌達ではないでしょうか。
1. Mayo Clinic Proceedings ~臨床医のための、読みやすく実践的な老舗内科誌~
- 創刊: 1926年
- 発行: Mayo Foundation for Medical Education and Research / Elsevier
- Web:https://www.mayoclinicproceedings.org
歴史と特徴:Mayo Clinicの臨床力を凝縮した雑誌
Mayo Clinic Proceedingsは、米国の名門医療機関であるMayo Clinicを背景に持つ、老舗の内科系ジャーナルです。
創刊は1926年。2026年でちょうど100周年を迎える歴史ある雑誌です。
もともとはMayo Clinic内の知識共有から始まり、現在では世界中の医師に読まれるgeneral and internal medicine journalとして発展しています。この雑誌の魅力は、一言でいうと臨床に近いことです。
Annals of Internal MedicineほどEBMの王道を前面に出すわけではありません。
JAMA Internal Medicineほど過剰医療への批判精神が強いわけでもありません。
Mayo Clinic Proceedingsは、もっと実用的です。
明日の診療に使える知識を、読みやすい形で届けてくれる内科誌です。
専攻医が読むべき理由:Reviewがとにかく読みやすい
Mayo Clinic Proceedingsを若手内科医にすすめる最大の理由は、Review系の記事が読みやすいことです。
特におすすめなのは、Concise Review for Cliniciansです。
名前の通り、臨床医のためのコンパクトなレビューです。
専門領域の最先端を深掘りするというより、忙しい臨床医が「このテーマを実臨床でどう理解すればよいか」を整理するのに向いています。
UpToDateほど細かすぎず、教科書ほど古くなく、原著論文ほど読みにくくない。
この中間にあるのが、Mayo Clinic Proceedingsの良さです。
Mayo Clinic Proceedingsで特に面白いのが、My Treatment Approachです。
これは、難しい臨床状況に対して、専門家がどのように治療方針を立てるかを示す記事です。
これは専攻医にとってかなり有用です。
必要なのは、専門家がどこで迷い、何を重視し、どこで妥協するかを知ることです。
My Treatment Approachは、その臨床判断のプロセスを学ぶのに向いています。
もう一つ、若手医師に向いているのがResidents’ Clinicsです。
Mayo Clinic Proceedingsは、教育的な臨床コンテンツを重視しており、Residents’ Clinicsもその代表的な企画の一つです。
このシリーズは、専門医向けの高度な議論というより、臨床現場で遭遇する問題を、若手医師が理解しやすい形で整理するのに向いています。
初期研修医から内科専攻医にかけて、ちょうど良い教材となります。
まとめ:Mayo Clinic Proceedingsは“臨床医の復習ノート”である
Mayo Clinic Proceedingsは、内科トップジャーナル4誌のような華やかさはありません。
しかし、実臨床に近いテーマを、読みやすく、教育的にまとめてくれる雑誌です。
特に、Concise Review for Clinicians、My Treatment Approach、Residents’ Clinicsは、若手内科医にとってかなり使いやすいコンテンツです。
Mayo Clinic Proceedingsは、臨床医の復習ノートです。
日々の診療で出会うテーマを、もう一度整理する。
専門外の疾患を、臨床目線で復習する。
ガイドラインだけでは見えにくい、専門家の考え方を学ぶ。
そうした目的で読むなら、Mayo Clinic Proceedingsは非常に良い雑誌です。
2. QJM: An International Journal of Medicine ~英国発、内科臨床を広く見渡す伝統誌~
- 創刊: 1907年
- 発行: Oxford University Press
- 関連団体:Association of Physicians of Great Britain and Ireland
歴史と特徴:Oslerの精神を受け継ぐ、英国系の老舗内科誌
QJMは、英国発の伝統ある総合内科ジャーナルです。
正式名称は、QJM: An International Journal of Medicine。
もともとはThe Quarterly Journal of Medicineとして始まった雑誌で、1907年にあのSir William Oslerによって創刊さてます。
この「Osler」という名前が出てくるだけで、内科医としては少し背筋が伸びますね。
William Oslerは、言わずもがな、近代内科学・ベッドサイド教育の象徴的存在です。
QJMは、その系譜に連なる英国系の内科誌として、長く医学知識の発展と臨床疾患の理解に貢献してきました。
現在のQJMは、内科を中心としたgeneral medical journalです。
専攻医が読むべき理由:総合内科の“幅”を取り戻す
QJMの魅力は、内科を広く見渡せることです。
QJMは、英国的です。
派手ではない。しかし、臨床的に渋い。そして、内科医が日々出会う問題を広く扱う。
このバランスが良い雑誌です。
専門医になるほど、自分の領域だけを読むようになります。
もちろん、それは必要です。
しかし内科医としての視野を保つには、専門領域の外側にも触れ続ける必要があります。
QJMは、そういう意味で総合内科の幅を取り戻す雑誌です。
QJMで読みやすいのは、ReviewとCommentaryです。
QJMのレビューは、超専門的な基礎研究を深掘りするというより、臨床医が知っておくべきテーマを整理するのに向いています。
また、CommentaryもQJMらしいコンテンツです。
原著論文やガイドラインを読むだけでは、臨床の微妙な問題は見えてきません。
そうした臨床的な思考を刺激してくれます。
QJMは、読みながら「なるほど、こういう論点もあるのか」と感じる雑誌です。
QJMには、画像で学べる短い臨床コンテンツもあります。
このタイプの記事は、忙しい医師にも向いています。
長い原著論文を読む時間がない日でも、一枚の画像や短い症例なら読める。そして、内科ではこの「見たことがある」が非常に大事です。
文章だけで覚えるより、画像で見た方が記憶に残ります。
QJMのClinical Pictures系コンテンツは、内科医の視覚的な引き出しを増やすのに役立ちます。
まとめ:QJMは“内科医の視野を広げる英国式ノート”である
QJMは、派手な雑誌ではありません。
しかし、100年以上の歴史を持ち、内科臨床を広く扱い続けてきた伝統誌です。
原著、Review、Commentary、Correspondence、画像・症例ベースの短い記事。
これらを通じて、内科医に必要な広い視野と臨床的な感覚を養ってくれます。
Mayo Clinic Proceedingsが「臨床医の復習ノート」だとすれば、QJMは、内科医の視野を広げる英国式ノートです。
専門領域に閉じこもりすぎず、内科全体をもう一度見渡したい。
そういう医師にとって、QJMは読みやすく、渋く、長く付き合える雑誌です。
3. European Journal of Internal Medicine ~欧州内科医の実践知を集めた、現場派ジャーナル~
- 創刊: 1989年
- 発行: European Federation of Internal Medicine
- WEB:https://www.ejinme.com
歴史と特徴:欧州内科学会連合の公式ジャーナル
European Journal of Internal Medicine、通称EJIMは、European Federation of Internal Medicine、つまり欧州内科学会連合の公式ジャーナルです。
EFIMは、EJIMを「欧州内科医のための主要ジャーナル」と位置づけており、内科のあらゆる領域を扱い、欧州における内科学の科学と実践を推進する雑誌と説明しています。
この雑誌の特徴は、欧州の内科医らしさにあります。
米国の内科誌は、臨床試験、医療制度、プライマリケア、費用対効果などをかなり明確に打ち出します。
一方、EJIMはもう少し、病棟・外来・急性期を横断する内科診療に近い印象があります。
総合内科医が日々向き合うテーマですね。
専攻医が読むべき理由:内科を“総合診療の現場”として読む
EJIMを読む価値は、内科を臓器別に分断せず、現場の総合診療として見直せることです。
内科専門医を目指す過程では、どうしても各サブスペシャリティに分かれていきます。
もちろん専門性は重要です。しかし、実際の患者さんは臓器別にきれいには分かれません。
EJIMは、そういった複雑な内科患者をどう診るかという感覚に近い雑誌です。
EJIMは、より欧州の内科病棟に近い実践知を読む雑誌です。
EJIMには、Internal Medicine Flashcardsという形式の短い教育的コンテンツもあります。
長い原著論文や総説を読む時間がない日でも、こうした短い記事なら読みやすいです。
という小さな臨床の引き出しを増やすのに役立ちます。
4. The American Journal of Medicine ~米国内科の“Green Journal”、臨床に近い老舗内科誌~
- 創刊: 1946年
- 発行: Alliance for Academic Internal Medicine
- WEB: https://www.amjmed.com/
歴史と特徴:米国内科医に長く読まれてきた“Green Journal”
The American Journal of Medicineは米国の老舗内科ジャーナルです。
創刊は1946年でとして通称はGreen journalです。単なる中堅誌ではなく、米国内科の中で長く読まれてきた伝統ある雑誌です。
臨床に近く巨大RCTで医学界全体を揺らすというより、内科医が日々の診療で出会う問題を、臨床研究、レビュー、診断、画像、症例的な視点から扱う雑誌です。
専攻医が読むべき理由:専門医ではなく“practicing internist”の目線で読める
読者目線がかなり臨床医に近いです。「内科医が実際に診る患者に関係するか」を重視している印象があります。
内科医が外来・病棟で出会うcommon diseaseやcommon presentationを、臨床的に整理するのに向いています。
Green journalが用意してくれている短い臨床コンテンツです。忙しい若手医師に向いています。
5. Journal of General Internal Medicine ~総合内科・医療教育・ヘルスサービス研究の実力派~
- 創刊: 1986年
- 発行: Society of General Internal Medicine
- WEB: https://link.springer.com/journal/11606
歴史と特徴:総合内科医のためのアカデミックジャーナル
米国のSociety of General Internal Medicineの公式ジャーナルです。
創刊は1986年でその特徴は名前の通りgeneral internal medicineにあります。
ただし、ここでいうgeneral internal medicineは、単に「専門性が薄い内科」という意味ではありません。
むしろ、プライマリケア、病院総合内科、医療教育、疫学、予防医学、医療の質、医療格差、ヘルスサービス研究を横断する、非常にアカデミックな総合内科雑誌です。
総合内科・医療教育・ヘルスサービス研究の領域では、非常に重要な雑誌です。
専攻医が読むべき理由:疾患だけでなく“医療そのもの”を考える
JGIMを読む価値は、疾患知識を増やすことだけではありません。
むしろ、医療の構造を考える力を鍛えるところにあります。
医療はどう提供されるべきか、医師はどう教育されるべきか、患者アウトカムを改善するには、診療システムをどう変えるべきか、という問いを扱います。
臨床医として一段上に行くには避けて通れないテーマです。
病院総合内科、つまりhospital medicineにも関係します。
この視点は日本の内科医にも重要です。
日本では、総合内科・病院総合診療・各サブスペシャリティの境界が施設によってかなり異なります。
しかし実臨床では、外来と病棟、急性期と慢性期、専門医療と地域医療はつながっています。
こうしたテーマを考えるとき、JGIMは役に立ちます。
疾患単位ではなく、患者の医療体験全体をどう設計するかを考える雑誌だからです。
6. Clinical Medicine ~英国Royal College of Physiciansが届ける、臨床医のためのCMEジャーナル~
- 創刊: 2001年
- 発行: Royal College of Physicians
- WEB:https://www.sciencedirect.com/journal/clinical-medicine
歴史と特徴:RCPが支える、臨床医のための実践的ジャーナル
Clinical Medicineは、英国のRoyal College of Physiciansが発行する臨床医学ジャーナルです。
創刊は2001年で、前身誌として Journal of the Royal College of Physicians of London を継承しています。
この雑誌の特徴は、非常に明確です。臨床医の診療を直接改善すること。
むしろ、日々の診療をしている医師に向けて、
「このテーマをどう整理するか」
「この専門領域の最新知識をどう押さえるか」
「総合内科医として、どこまで知っておくべきか」
を届ける雑誌です。
専攻医が読むべき理由:専門外の知識をCMEとして補える
Clinical Medicineを若手内科医にすすめる理由は、continuing medical educationとの相性が良いからです。
内科医は、自分の専門領域だけを診ているわけではありません。
Clinical Medicineは、そうした専門外の知識を、臨床医向けに効率よく補うのに向いています。
専門医向けに深掘りしすぎず、かといって一般向けに浅すぎない。
この「ちょうどよさ」が、Clinical Medicineの魅力です。
Clinical MedicineのReviewは、英国RCPらしい継続教育としてのレビューです。
要するに、読んだ後に臨床へ戻りやすい。
症例を通じて学ぶコンテンツです。
単なる症例報告というより、臨床方法論を鍛える症例教材として読めます。
おまけ
下記は日本発の2誌です。
どちらかというと読むというより若手医師が投稿先・症例報告・総合診療系の発信を考えるうえで価値がある雑誌ですね。
Internal Medicine ~日本内科学会が発信する英文内科誌~
発行は日本内科学会でIFは1.0前後です。
日本の初期研修医を含めた若手内科医が「英語で症例を書く」という第一歩を踏み出すには、かなり現実的な雑誌です。
Internal MedicineのCase ReportやPictures in Clinical Medicineは良い目標になるでしょう。
Journal of General and Family Medicine ~日本発、総合診療・家庭医療を世界に届ける英文誌~
発行は日本プライマリ・ケア連合学会です。
IFは2.0前後あり、日本発の総合診療・家庭医療系英文誌として、かなり健闘している数字です。
出版社もWileyであり、Internal Medicineよりも国際誌としての体裁が整ってます。
